杉並区長 田中 良 様
「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会
◇わたしたちとの話し合いを求めます
わたしたちは、1月29日に、「新型コロナウイルス感染患者のいのちの選別推進を許しません」と題する文書を提出いたしました。
その後、わたしたちは杉並区議会を傍聴し、2月9日の予算方針説明、2月10日午前中の日本共産党山田区議の質問に対する答弁、10日午後のいのち・平和クラブの新城議員の質問に対する答弁を聞いていました。
区長は、「障害者団体の方などからいただいたご意見につきましては、その真意が十分に伝わらなかったことによるものと受け止めております」(山田区議の再質問に対する答弁)と述べています。
わたしたちに区長の真意が伝わっていないとの考えであるならば、直接区長の真意の説明を受けて、話をしたいと考えております。
新城議員とのやり取りにおいては、論点を解かりにくくさせているように捉えました。
わたしたちをはじめとして、区長の「トリアージ」発言の問題を指摘した団体の文章には、戦場云々を問題にしているものはありません。
そのため、議会での「戦場という表現を用いたことによりまして、わたくしの意図が正確に伝わらず、結果として、障害者団体の方などに不安を与えてしまったことについては、率直にお詫びを申し上げたいと思います。」との区長の謝罪は、誰に謝罪しているのか、まったくわかりません。
このような議論の混乱を避けるためにも、区長と私たちが話し合いをする場を、設けていただくよう、求めます。
以下に、改めて、私たちの論点を示します。
文春オンラインでの区長発言を、私たちは次のように捉えています。
●区長は、「人工呼吸器やエクモといった医療資源、これを扱う医療従事者には限りがあります。患者がどっと押し寄せると足りなくなる。その場合には、治癒が期待できる人を優先すべきだ、というのがトリアージの考え方です。」と発言しました。
その上で、こういった政策について「「命の選別」に当たるとして反対する人もいる」ことを自覚しながらも「しかし、きれいごとでは済まない現実」があるのだと言います。
そして、「例えばの話ですが、年齢を5歳刻みなどで、生還率や死亡率」を検討したり、「基礎疾患との関係」などを検討して、「この人から人工呼吸器を外して、あの人に付けないといけない」というガイドラインを、都民や有識者も巻き込みつつ、都知事が作るべきである、と主張していると認識しています。
●このガイドラインが高齢者・基礎疾患のある人を救命治療の対象から外すものであることは、明らかです。
わたしたちは、区長のいう「「命の選別」に当たるとして反対する」者たちです。区長は、議会での答弁の中で「切迫した医療現場を守る」ことを重要視しています。
一方で、まともな救命治療を受けられずに死なされる者の悲しみや苦しみを一顧だにしません。死なされる者の周囲の家族、福祉や医療で働く者の悔しさも振り返ろうとはしません。
そして、こうしたガイドラインが一度作られるなら、医療制度を改善することではなく、いのちを切り捨てることによって、社会制度のほうを守ろうとする危険な優生主義が強められることは、明らかです。
●わたしたちも医療現場を守ることに同意します。しかし、まだ医療現場の支援拡大の余地があるにもかかわらず、命の選別を推進する方針に反対します。医療体制の改善は大いに可能であると考えます。
昨年、新型コロナウイルス感染の第1波が落ち着いた頃に、冬の感染が警告されていたにもかかわらず、準備を行ってこなかった政治にこそ責任があると考えます。
●上記の論点をもって、1月29日に文書を提出し、「いのちの選別を推進する姿勢を改め、そうした趣旨のこれまでの発言を撤回してください」、「命の選別につながる内容を撤回する意思を、都知事に伝えてください」と申し入れました。
しかし、区長の山田区議への答弁の中で、「今回の要望等を撤回する考えはございません」との発言があったことで、こうしたわたしたちの申し入れも、無視されてしまうのではないか、と懸念しています。
区長の考えが、わたしたちの懸念する通りだとすると、生命について「立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と規定する憲法第十三条、平等原則を規定した第十四条、生存権と福祉の向上を規定する第二十五条に違反することになります。
障害社権利条約で「生命に対する権利」を規定した第十条にも違反します。
わたしたちは、憲法第十二条および第九十七条にも記されている人権を守るための「不断の努力」として、区長に申し入れています。
●前述の理由をもって、わたしたちとの話し合いの場を早急に設けていただくことを要請します。