2021年4月15日

津久井やまゆり園のパラリンピック採火所指定に抗議します

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 会長 橋本 聖子 殿
神奈川県知事 黒岩 祐治 殿
相模原市長 本村 賢太郎 殿

「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会
 

 私たちは、障害者権利条約の具現化のため、2011年8月にしょうがいしゃの代表も参加して作られた「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」(「骨格提言」)の完全実現を求めて運動している団体です。
 報道によれば 3 月 31 日、 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委)および神奈川県は、 8 月に改築工事が終わる津久井やまゆり園を東京パラリンピックの聖火リレー採火所の一つにしました。同園がある相模原市は「事件を風化させず、誰ひとり取り残すことのない共生社会実現への誓いを込めて実施したい」と説明しました。
 私たちはこれを知り、驚きと 強い憤りを感じています。その理由を、以下に示します。


●共生社会ではないから入所施設が存在する
 「骨格提言」では、施設での長期入所者の存在を、放置できない社会問題と考え、その解決を図ることを重要な目標の一つとしています。そして次のように述べています。


「世界でノーマライゼーションが進むなか、わが国では依然として多くの精神障害者が「社会的入院」を続け、知的や重複の障害者等が地域での支援不足による長期施設入所を余儀なくされています。また、公的サービスの一定の広がりにもかかわらず障害者への介助の大部分を家族に依存している状況が続いています。これらを解決するために地域での支援体制を確立するとともに、効果的な地域移行プログラムを実施します。」

 

 共生社会の実現とは、この立場から実行されるものです。津久井やまゆり園には、長期の施設入所者がいます。その人たちに、組織委、 神奈川県、相模原市は、どのように向き合っているのでしょうか。「入所施設も、共生社会だ」などという発想があるのではないか、との疑念を私たちは抱きます。

 イベントで共生社会が実現することはありません。地域で生きていくための保障を求める私たち
は、行政から「予算が少ないのでできない」という言葉をしばしば聞きます。それに比較して、何倍にも増えていくオリンピックの予算を知るにつけ、強い疑問を感じてきました。津久井やまゆり園の入所者も、全国の施設入所者も、1日も早く地域に迎え入れなければならない仲間なのです。だから、 全国のしょうがいしゃが津久井やまゆり園の再建に疑問を投げかけてきたのです。そのための具体的な計画こそが必要なのであって、イベントで問題の所在をうやむやにするようなことは止めてください。


●殺人や虐待が行われてきた場所を、どうして「共生社会実現への誓い」の場とできるのか
 津久井やまゆり園は 2016 年に、障害者不要論をもつ犯人によって 19 人が殺され、 27 人がけがを負った場所です。 2020 年 3 月 16 日の判決では、犯人の不要論を作り出した一つの要因を「本件施設での勤務経験」としています。また、昨年5月に発表された津久井やまゆり園利用者支援検証委員会の報告、今年3月30日に発表された神奈川県障害者施策審議会 障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会の報告書案において、虐待と言える身体拘束が行われていたことが明らかになっています。
 なぜ、このような場所で採火式を行おうとするのか、 到底理解できません。職員が支援の在り方を点検し、改善して行こうとしているならば、それをアドバイスし、応援する日常的なかかわりが必要なことは確かでしょう。しかし、「共生社会実現への誓い」の場とすることには、強い疑問を感じざるを得ません。
 以上述べてきたことからも明らかなように、津久井やまゆり園は、日本の福祉政策の負の象徴で
す。国連の障害者権利委員会では、コロナ禍のなかで改めて入所施設の有害性を取り上げています。それを津久井やまゆり園、入所施設を「共生社会実現への誓い」とするのは、主催国の市民として、許せません。

 私たちは下記を強く要望します。
        記
1. 津久井やまゆり園の採火所指定を取り下げてください。
2.入所施設を美化するようなことは決して行わず、その利用者全員を地域に迎え入れるための具体的な計画を実行してください。


以上