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2021年6月1日

新型コロナウィルス感染のもとでおきている、いのちの選別についての質問状

厚生労働大臣 田村 憲久 殿

「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会

 

 新型コロナウイルス感染にかかわり、多くの人々のいのちが危険にさらされていますが、とりわけ、高齢者施設、しょうがいしゃ施設、精神科病院に入所・入院している人々の命が危険にさらされています。

 この問題について、厚生労働省の認識と対策を伺います。

 

(1)高齢者施設では、昨年5月に北海道の老人保健施設茨戸アカシアハイツで、新型コロナウイルス感染によるクラスターが発生し、救急搬送を求めても保健所に断られ、施設内で死亡した入所者が出ました。その後も、各地でこのような状況が続いていることが報じられました。

 しょうがいしゃ施設でも、栃木県のとちのみ学園で、今年1月にクラスターが発生し、同じように施設内で亡くなられた方々がいらっしゃることが報じられました。

 精神科病院においては、日本の人口に占める感染者の割合に対して、精神科病院の入院者に占める感染者の割合は、4倍にも達し、また、一般の感染者の死亡割合に対して、精神科病院の感染者の死亡割合は4倍もあるとの指摘が行われています。日本精神科病院のアンケート調査では、感染者の6割以上が、治療のための転院をすることができなかった、とも報じられています。

 

①高齢者施設でのクラスター発生の数、感染者数、施設内での死亡者数を教えてください。

 

②しょうがいしゃ関連施設におけるクラスター発生の数、その感染者数、施設内での死亡者数を、入所施設、グループホームなど施設種別ごとに分けて教えてください。

 

③精神科病院でのクラスターの数、感染者数、そのうちの精神科病院内での死亡者数を、教えてください。

 

④上述の施設や病院での悲劇を繰り返さないために、厚労省は、どのような施策をおこなうことにしておられるのか、示してください。

 

⑤私たちは、こうした施設への隔離・収容という構造が、大きな被害を出していると考えますが、厚労省の見解を示してください。

 

 

(2)4月19日に、大阪府の医療監の出した公式のメールが問題となりました。高齢者の入院調整をあとまわしにし、入所している施設内で看取ることも求める内容でした。しかし、自治体から同種の通知が発せられています。

 神奈川県は、今年1月13日に、「新型コロナウイルス感染症陽性患者の入院管理を現在行っていない病院において発生した陽性患者の入院管理の継続について(通知)」(添付)を発出し、医療機関に対して、「現実に院内で陽性患者が発生した場合は、酸素投与などの医療行為や人生の最終段階における医療の提供を含め、原則として自院で継続して入院管理 していただきたいこと。」を求めています。そのため、精神科病院から入院者の家族に対して、「万が一重症化した場合は看取りに切り替えることがある」ことも含めた同意書へのサインを求める、ということも起きました。

 東京都八王子市でも、昨年12月18日に高齢者施設や医療機関に向けて発出された「院内、施設内において新型コロナウイルス感染症患者が発生した際の御対応について(依頼)」(添付)において、「現実に、病院、施設内で新型コロナ感染が判明し、その患者が DNAR※を希望されている場合、自院、自施設内で介護、看護し続けていただかざるを得ないケースが出てきました。こうした状況は貴院、貴施設でも起こりうることであり、不測の事態に備えた御準備を、適宜進めていただきますよう、お願い申し上げます。」と記載されており、大阪府の医療監のメール、神奈川県の通知と同趣旨のものです。

 

①同趣旨の通知を発出した自治体を、厚労省として把握していますか。把握しているならば、その自治体数、自治体名も教えてください。

 

②このような自治体の通知を促す厚労省の通知があるのかどうか、教えてください。

 

③わたしたちは、このような通知は、たとえその背景として、医療のひっ迫した現実があるとしても、高齢者、しょうがいしゃ、病気を持つ人のいのちを軽視するものであると考えます。厚労省の見解を示してください。

 

 

(3)上述の通知類において、共通してDNARという言葉が出てきます。とりわけ、川崎市が今年1月22日に発出した「新型コロナウィルス感染症蔓延期における障害児者福祉施設内陽性者の入院対応について(依頼)」及び「蔓延期における高齢者・障害者等施設内陽性者の入院対応について(依頼)」においては、「DNAR(延命処置・人工呼吸器装着希望の有無)」と記載し、DNARがこの種の救命治療を行わないことを希望していることとしています。そして、他の自治体の通知類においても、文脈上、DNARについて、これと同様の意味として扱っているとしか思えません。

 

①本来、DNARとは、心肺蘇生法をおこなわないという意味のはずです。厚労省として、DNARを、「延命処置・人工呼吸器装着希望の有無」とする川崎市の解釈について、どのように考えるか、見解を示してください。 

 

②八王子市の通知においては、DNARを「希望」している場合に、その人が入所・入院施設に留め置くことを求め、川崎市では、「概ね人工呼吸器管理を行わない病床に受け入れていただきました」との回答がありました。これでは、DNARが「尊厳死」のための事前指示と同じものとなってしまうと考えます。厚労省の見解を示してください。

 

③川崎市は、DNARを平時から高齢者施設はもとより、しょうがいしゃやしょうがいじの入所施設利用者にも確認するように求めています。そして、意思確認の方法については、それぞれの施設に任せているとのことです。

 これでは、厚労省が2018年3月に示した「「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂について」において、「心身の状態の変化等に応じて、本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針や、どのような生き方を望むか等を、日頃から繰り返し話し合うこと 」という手続きさえ無視されることになると思われます。厚労省の見解を示してください。

 

 

(4)厚労省は、しょうがいしゃがコロナウイルスに感染したり、濃厚接触者となった場合にも、訪問系サービス事業所に引き続き介助を継続して実施するように求めています。これを私たちは大いに評価しますが、他方、こうした介助を実行するためには、ヘルパーへの感染を防ぐための措置の保障が必要です。適宜必要な場合の防護具の給付、希望するヘルパーへのワクチンの優先接種などは、当面必須の課題であると考えます。

 こうした保障について、実行していく計画があるのかどうか、説明してください。

 

 

(5)日本の新型コロナウイルス感染者は、欧米にくらべても、10数分の1やそれ以下の数であると言われます。にもかかわらず、医療が崩壊してしまいました。

 

①この医療崩壊の原因は、どこにあるのか、厚労省の見解を示してください。

 

②集中治療のための病床や感染症病床が増えていません。なぜ、増やす政策がとられていないのか、厚労省の見解を示してください。

 

③厚労省は、病床を減らしたり、医学部の定員を削減する政策をおこなっていますが、これではますます医療崩壊を深刻化させることになると考えます。厚労省の見解を示してください。

 

以上

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