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2020年10月5日厚生労働省交渉

精神科病院ついての質問状

★神戸市の神出病院について
 本年3月5日、各紙報道は、神出病院における職員による患者虐待を報じました。
前日に、職員6人が準強制わいせつや監禁、暴力行為等処罰法違反により、警察に逮捕されたのでした。
「男性患者同士にキスをさせた」「無理やり性器をなめさせた」「檻付きのベッド(重さ106キロ)を逆さまにして患者を閉じ込めた」「トイレで裸にしてホースで水をかけた」という非人間的行為の数々が報道されて、加害者はその患者の反応が面白かったと言っているということでした。なお、ベッドに閉じ込められた 63 歳の人はその後亡くなっています。死因は不公表です。

このような病院内における虐待は、10年以上にわたって続いているとも言われます。


厚労省は、3月11日に、この事件について、精神・障害保健課長名の事務連絡を出されていますが、その後の取り組みも含めて質問いたします。


(1)精神保健福祉法第三十八条の六は、「厚生労働大臣又は都道府県知事」に、精神科病院における患者の処遇について、立ち入りを含めて調査する権限を与えていますが、神出病院の事件について、厚労省は、これに基づく調査を行いましたか。行っているならば、これにより把握した事実を述べてください。

この調査を行っていなければ、なぜ行わなかったのかを説明してください。


(2)精神保健福祉法第三十八条の七は、「厚生労働大臣又は都道府県知事は、精神科病院に入院中の者の処遇」について、改善命令を行う権限があることを規定しています。厚労省として、神出病院に対して、患者の処遇について、改善命令を出しましたか。

 出したのであれば、その内容を明らかにしてください。改善命令を出していないのであれば、なぜ、改善命令を出さなかったのかについて、説明してください。
 

(3)神出病院の患者処遇の実態について、厚労省として、どのような実態をつかみ、現在どのような見解をお持ちか、述べてください。

(4)神出病院は、これまでしばしば、医療保護入院の在り方について、神戸市から不適当と指摘されてきました。また、逮捕された被告たちが裁判で、自分たちが就職する以前から、虐待が行われていた、と証言しています。こうした、過去から現在に至る神出病院の状況について、厚労省の認識を述べてください。また、こうした神出病院が、保険診療を行う機関として適切なのかどうかについても、見解を示してください。


(5)3月5日に報じられた事件について、神戸市の精神医療審査会は、患者からの訴えがなかったから、として、実態解明に動こうとしません。問題が明らかになったのだから、入院患者の状況を把握し、患者の話を聞くべきです。神戸市の調査でも、患者からの声を聴くことはありませんでした。病院側の改善計画においても、患者からの声を聞こうとはしていません。
 これは、せいしんしょうがいしゃを人として扱わない姿勢であり、日本国憲法も障害者権利条約をも無視する姿勢だと言わざるをえません。こうした体質が、患者の虐待につながる根本原因であると考えますが、厚労省の見解を示してください。


(6) '障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律'の附則第二条では、

 「政府は、学校、保育所等、医療機関、官公署等における障害者に対する虐待の防止等の体制の在り方並びに障害者の安全の確認又は安全の確保を実効的に行うための方策、・・・等のための制度について、この法律の施行後三年を目途として、児童虐待、高齢者虐待、配偶者からの暴力等の防止等に関する法制度全般の見直しの状況を踏まえ、この法律の施行状況等を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」

と規定しています。
すでに、この法律施行から8年が経過しているにも関わらず、見直しは行われず、医療機関、とりわけ、精神科病院での虐待は後を絶ちません。厚労省は、こうした精神科病院における虐待については、その実態を把握して公表することさえしてきませんでした。

 

 神出病院事件を契機に、 '障害者虐待防止法'を、以下の観点で改正すべきであると考えますが、厚労省の見解を示してください。
・第二条2項の「障害者虐待」の定義について、養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者による虐待に加えて医療機関の職員、学校の職員、保育所の職員、官公署等の職員による虐待を加えること。
・虐待「を受けたと思われる障害者を発見した者」の行政への通報義務を、医療機関、学校、保育所、官公署等にも拡大すること
・これらの虐待状況については、毎年度公表するようにする。とりわけ、都道府県知事により、精神科病院における虐待の状況、この虐待に対して取った措置について、毎年度の公表を、早急に行うようにすること。


(7)ちてきしょうがいしゃの入所施設をめぐる虐待については、千葉県袖ケ浦市の県立障害者支援施設「袖ケ浦福祉センター」での虐待、神奈川県の津久井やまゆり園をはじめとする県の関係施設の虐待に関して、第3者委員会による検証をおこなっています。神出病院についても、外部の第3者による検証が必要なのではないか、と考えますが、厚労省の見解を示してください。
 


★「県立ひょうごこころの医療センター」における看護師による暴力事件について
8月5日、 NHK は、 '県立ひょうごこころの医療センター'で5月に起こった看護師による暴力事件を伝えました。同センターは、この日にこの看護師に処分を出したそうですが、この問題につき、質問いたします。


(1)厚労省は、精神保健福祉法第三十八条の六に基づく調査、あるいは、精神保健福祉法第三十八条の七に基づく改善命令をを行う予定はありますか。


(2)同センターの発表によれば、「看護師はことし5月、精神疾患で入院中の男性患者から顔を2回殴られたことに腹を立て、顔を殴り返して、右目のまわりの骨を折る全治2か月のけがを負わせた」とのことです。
 厚労省として、把握している事実を説明してください。


(3)今回の事件がなぜ起こってしまったのか、また、過去にもこれに類する事件が
あったのかなどについて、厚労省の見解を示してください。


★精神科病院でのオンライン面会について
 新型コロナウイルス感染を警戒して、精神科病院では、面会や外出の制限が行われています。そのため、 '精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第 37 条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基
準'の「精神科病院入院患者の院外にある者との通信及び来院者との面会(以下「通信・面会」という )は、
「患者と家族、地域社会等との接触を保ち、医療上も重要な意義を有するとともに、患者の人権の観点からも重要な意義を有するものであり、原則として自由に行われることが必要である。」と記載されています。この法的基準が保障されていないのです。
日本国憲法第十八条前段は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。」と規定しているにもかかわらず、精神保健福祉法によって、強制入院が行われているのです。そうであるならば、面会の自由を保障するのは、国としての責務であるはずです。
しょうがいしゃの入所施設については、5月22日に、 '社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課'から
「障害者支援施設等におけるオンラインでの面会の実施について」が発出されています。ここでは、

「利用者の方とそのご家族等との間で、ご家庭にいながらオンライン面会(テレビ電話システムや Web アプリのビデオ通話機能等のインターネットを利用する面会)を行っていただくことが望ましいです。」とした上で、

「(1)必要となる備品等」、「(2)オンライン面会を行うにふさわしい環境」など、具体的な体制も記しています。
6月2日には、同局・同部の'精神・障害保健課'から「精神科医療機関における新型コロナウイルス感染症等へ対応について」 と言う事務連絡の中で、「(3)精神科医療機関で感染者が発生した場合に備えて、平時より、各医療機関において以下の感染防護体制について検討するよう促すこと。」の中で「・感染拡大防止のため、 家族等との面会を行う場合におけるオンラインによる面会の実施」と記載されているにすぎません。


(1)6月2日の事務連絡により、どの程度、精神科病院でのオンライン面会が行われているのか、厚労省が把握している実態を示してください。


(2)同じ'障害保健福祉部'内にありながら、どうして、 '精神・障害保健課'は、これほど、オンライン面会に消極的なのか、その理由を示してください。


(3)早急にオンライン面会を保障する措置を取るべきであると考えますが、厚労省としての見解を示
してください。


★宇都宮市内精神科病院での不適切診療問題についての厚労省の行政指導について
 7月21日付の毎日新聞の地方版では、

「宇都宮市の精神科病院が入院患者に不適切な医療行為をしているとして、同市の元嘱託医、朝信泰昌精神科医が20日、行政指導を求める申出書を厚生労働省と県、同市に提出した。県庁で記者会見を開いた朝信医師は「市は多くの問題点を黙認している。不要な治療や入院が行われているのではないか」と訴えた。」

と報じました。とちぎテレビなども同趣旨の報道をして
います。
毎日新聞の記事では続けて、「申出書によると、同院では2015年1月、同市が生活保護法に基づく個別指導を実施した際、認知症治療に必要な検査が実施されていない事例が3件見つかった。また18年7月の指導でも、

長期入院患者9人のカルテについて、うつ病の記載があるのに抗うつ剤の処方がない

▽重度のアルツハイマー型認知症患者が任意で入院している

▽レセプト(診療報酬明細書)と同市に提出する書類で病名が異なる――

など複数の問題点が見つかったという。」とも記されています。
厚労省は、どのような行政指導を行ったのか、その内容を示してください。
まだ行っていないとすれば、いつ、どのような内容で行うつもりかを、示してください。
以上

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